米国食品医薬品局(FDA)の医薬品評価研究センター(CDER)は毎年年初に、前年に承認した新薬の総括レポートを公開している。『New Drug Therapy Approvals 2024』の中で、センター長の Patrizia Cavazzoni 氏は、24年の成果として「迅速な承認審査」とその結果としての「世界初承認薬の多さ」、「18のバイオシミラー承認」、「これまで治療法がなかった希少疾患薬の複数承認」を強調した。このレポートを中心に、❶24年に承認された新薬の傾向、❷FDAによる迅速承認の背景、❸注目の非オーファン薬などを紹介する。
■7割近くが世界初承認
まずは全体の傾向を見てみよう。
【24年のNMEsは50品目】24年に承認された新薬(新有効成分含有医薬品、NMEs)は50品目。過去30年で、23年の55品目に次ぐ2番目の多さだった。
疾患領域としては、がん(Oncology)が最多の13品目(26%)、次いで遺伝性疾患が7品目(14%)、皮膚が5品目(10%)だった〈図〉。
モダリティでは、低分子(分子量500以下程度)と中分子(分子量500~2,000程度)が27(54%)と半数以上を占める一方、二重特異性抗体3品目と核酸医薬2品目も承認された。
また、First-in-classは24品目(48%)と半数近くを占めた。
なお、23年のグローバル売上高が上位20位以内の大手製薬企業の製品は10品目(20%)のみだった。
【効率的な市場投入】FDAは24年の承認で「審査プロセスの効率性が実証された」と胸を張る。具体的な内容は、以下の通り。
●「承認の是非を決める期日の目標日(PDUFA Goal Date)」を達成→47品目(94%)
●1回目の審査サイクルで承認→37品目(74%)
●米国の承認が世界初→34品目(68%)
●重篤な疾患に対する迅速承認措置※を1つ以上利用→33品目(66%)
※優先審査、ブレークスルーセラピー、ファストトラック、迅速承認
【迅速承認の背景】米国では1992年、医薬品の承認審査の円滑化と審査期間の短縮のための「処方薬ユーザーフィー法(PDUFA:Prescription Drug User Fee Act)、パデューファ」が連邦議会で可決・成立した。当初5年間の時限立法だったが、審査期間の短縮が認められ、迅速承認と安全性確保の両立など指摘された課題に対応しつつ、現在はPDUFAⅦ(23~27年度)となっている。
FDAは同法に基づき、企業から、新薬申請(NDA)または生物学的ライセンス申請(BLA)の申請料(Application Fees)を申請する時点で、同等のジェネリック医薬品がない特定の承認済み薬剤に対するプログラム料(Program Fees)を年に一度、徴収できる。徴収した資金はCDERまたは生物製剤評価研究センター(CBER)の医薬品承認活動のみに使用される。また、承認の可否を決める期日の目標日(PDUFA Goal Date)の遵守と、各年会計年度(10~9月)終了から120日以内の議会への報告が求められている。
23年度の財務報告によると、FDAはユーザー料金(User Fees)で約1,932億円相当の純収入を得て、常勤職員4,807人の支援を含むヒト用医薬品の審査プロセスに(収入を上回る)約1,976億円を充て、約441億円を繰り越した。
24年度の申請料は、臨床試験データを必要とする場合、約6.4億円だったが、25年度には約6.8億円に値上げされる予定〔臨床試験データを必要としない場合(承認済み医薬品の医承認事項変更申請やブリッジング試験実施など)は各半額程度〕。一方、プログラム料は、年間約6,600万円から約6,400万円に若干値下げされる。
こうした莫大なユーザー料金で運営している以上、「迅速な承認審査」を達成し、成果を発信する必要があることもうなずける。
直接の比較はできないが、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の業務案内によれば、24年4月現在の常勤職員は1,063人(うち審査部門635人)、予算規模は、収入約300億円、支出約360億円(うち審査業務経費は約213億円)である。
【バイオ後続品の承認状況】FDAは24年、3つの参照製品(RBP:Reference Biotherapeutic Products)に対して、8つのバイオシミラー製品(BS)を承認。これまでと合わせて17のRBPに対してBSが63というラインナップとなった〈表1〉。なお、日本では24年9月現在、19のRBPに対して41のBSが承認されている。